福岡の市街地から西へ、海辺をドライブすること30〜40分。
そこはもう、玄界灘の青い海と背振の山々に囲まれた美しい糸島。
30年来の友人である、矢川弘文氏と藤隆次郎氏。
「仕事の話はしない」という流儀の二人を、
オフタイムの朝に訪ねた。
糸島のオフタイム
藤 オフタイムの楽しみは、中洲ですか?
矢川 いやいや、ここから船出して、釣りですよ。糸島はタイ、ヒラメ、アジ、なんでも釣れる。
藤 私の場合、仕事も遊び感覚なんで。
好きな仕事やったら、いつがオンでいつがオフか、あんまりないね。
最初に出した店も、サーフィンしとった流れやもんね。インポートカジュアルで、
店の名前も「サーファーガール」やけんね(笑)。
あんまり「仕事」という意識がないんですよね、若いときから。
矢川 サーファーのハシリね。
藤 糸島には縁があって、20代の頃に来てたサーフポイントの前に、
たまたま土地があって、そこでレストラン出したり。
糸島は、海沿いのお店とかもいいし、サンセットライブも有名になったしね。
海もあって、山もあって。全国で福岡ほど恵まれたところは、ないっちゃないかな。
市内から1時間もかからんで、糸島まで来れるでしょ。
かなりの贅沢ですよね。
矢川 朝から「釣り行こう」とか「ゴルフ行こう」って話でも、
昼いちばんから行けるもんね。
藤 東京でゴルフとか誘われたくないもんね。
下手したら2泊せんといかんやない。
福岡は、東京の人とか羨ましがる環境だと思いますよ。
矢川 食いもんも美味しいしね。釣ってきた魚をすぐさばいてね。これは美味い。
藤 二人とも料理好きやし。食事しながら、いろいろ話しますね。
異業種やけん、物事を同じ方向で見てないから、刺激があるよね。
矢川 仕事の話はせんけどね。世の中のこととか、政治のこととか、けっこうやかましいもんね。
意外に、人に見せない真面目さがあるね(笑)。
藤 多少は、真面目な部分がないとねえ(笑)。
矢川 バブルの頃から生き残っとるのは、あんまりおらんしね。
藤 バブルのときは、俺は逆に悪かったもんね。バブル崩壊してから元気になってさ。
矢川 だけん良かったとよ。バブルで調子にのっとったら、とんでもなくなっとるよ。
やっぱ、変化がないといかんね、世の中も、自分もね。
藤 矢川さんは覚えてないかもしれんけど、俺の店がちょっと悪くなってきて、
次の手を考えんといかんかったときに、
「お前、調子悪いっちゃない、めんたい屋すればいいっちゃない」って言われてね。
あとで考えたら、嬉しかったね。まあ、結果的には、せんでよかったけどね(笑)。
仕事が遊び 遊びが仕事
藤 仕事のモチベーションって、本質的には「褒められたい」ってことやろ。
そこしかないっちゃけん、人間は。
遊ぶときも、ひとりじゃつまらんしさ、やっぱり誰かを「楽しませたい」ってことよね。
遊びが上手じゃないと、生きとる意味がないし、稼ぐ意味がないもんね。
矢川 やっぱり、仕事と遊びをひっくるめて、人生やろうし。
藤 矢川さんを見とって思うのは、「お金を使うからこそ、稼がんといかん」と。
そして「稼いだ分は、楽しく使う」と。そこが大事じゃないかな。
矢川 そう思うよ。
藤 貯金通帳の話じゃなくて、「どんだけ楽しんだか」の話よね、矢川さんは。
自分で釣った魚を料理して出すとか、「人を喜ばせてやりたい」っていう、
そういう優しさはものすごくあるよね。そこは、俺は初めて褒める(笑)。
だけん、この際、俺のいいとこも聞いとこうか(笑)。
矢川 ないものを無理して言えば、やっぱね、優しいとこよ。結局、「人は優しさ」って思うよ。
人が寄ってくるのも、そのおかげやろ。そうやって集まって遊んだら、楽しいよね。
藤 人生は楽しくないと、もったいないけんね。
矢川 やっぱり、あの人の生き方とか楽しみ方が羨ましい、じゃないけどね、
自分もやってみたいと人に思わせんとね。
釣ってきた魚をさばいてね、ごちそうせんとね(笑)。
藤 その点、糸島はいいよ。福岡からすぐで、こんだけの環境にスイッチを入れ替えられる。
矢川 ちょっと見てん、海が光りよるよ、キラキラ。魚が呼んどるっちゃない?